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飛び石

日本庭園の要素の中でも、その美意識を最も端的に示す飛び石について、考えてみましょう。

まずは、上の写真をご覧ください。ユネスコ世界文化遺産にも登録されている栂尾山高山寺境内にある茶室「遺香庵」の茶庭に打たれた飛び石です。ここでは、飛び石に大小の自然石を組み合わせることで、山中の茶庭にふさわしい簡素でありながら調和のとれた雰囲気を醸し出しています。

「飛び石」という名称ほど、手段と目的がひとつになった呼び名は少ないと言えます。日本庭園において、飛び石は客人の衣服を汚さずに茶室へ導くという実用的な役割を果たします。しかし「飛び石」という名称は、石をただ真っ直ぐに並べるだけではなく、あえてやや不規則な間隔で配置する技法が庭園の景観において重要な美的役割も担っていることを示唆しています。

つまり、飛び石が打たれた園路は、日本庭園における機能性と美の創造的な緊張関係が文字通り足元まで及んでいることを、他に類を見ない形で体現しているのです。

日本庭園を歩く際、飛び石の大きさや配置は、私たちの移動経路や視界(あるいは視界に入らないもの)を巧みに制御する絶妙な力を発揮します。飛び石の配置様式は庭園様式によって様々ですが、典型的には片足が乗る程度の小さな石がいくつか連なり、その後ろに両足が乗る大きな石が続くというパターンを適宜繰り返していきます。これにより視線は自然と足元へと導かれ、大きな石に到達した瞬間に立ち止まり、周囲の景観を見上げるようになります。

一見単純な技法にも思えますが、茶庭に効果的に配置された飛び石は、茶室へと続く園路を鑑賞ポイントで埋め尽くすという巧妙な効果をもたらします。この点が、茶庭の狭い空間を進むごとに、飛び石が客人を深い山奥の風景へと誘う切り替えの印象を与え、茶室に辿り着く前に俗世の煩わしさを忘れさせる理由になっていると言えます。

一方で、歩くことよりも景色そのものとして鑑賞されることを意図した飛び石の例も数多く存在します。桂離宮や旧芝離宮庭園といった17世紀の回遊式庭園に、こうした石の傑作例が見られます。より時代が下った近代の庭園では、石臼や寺院の柱礎を飛び石に転用して数寄の感覚での面白味を味わうこともあります。京都ではしばしば水車石が飛び石として用いられ、庭園構成に素朴な村景の趣を添えています。

小説の語り手が物語の内側にも外側にも存在しうるように、飛び石も庭園景観の一部でありながら、同時にその外側に位置しているとも考えられます。そうだとすれば、それらが機能性を重視されるか美観を重視されるかは、私たちが飛び石に語ってほしい物語次第なのかもしれません。

こちらは無鄰菴の飛び石です。丸く平らに加工された石(伽藍石と呼ばれる)は、園路を一時的に中断し、来客の視線を最も見てほしい東山の借景を眺める視点へと導く「踏み分け石」として用いられています。