文化財・庭園修復

史跡高山寺境内 歴史活き活き!史跡等総合活用整備事業(災害復旧)造園工事

表参道から見た境内地の様子(2020年現在)

表参道から見た境内地の様子(2020年現在)

国宝石水院からの眺め(2020年現在)

国宝石水院からの眺め(2020年現在)

文化財の修理や修復は、経年変化による劣化に対応するものと、災害などの緊急事態で発生した破損に対応するものに大きく分かれます。ここでは、2018年に栂尾山高山寺境内が受けた台風等による被害に対する災害復旧工事について、概要をお伝えします。

高山寺について

高山寺は、京都市街北西の山中に位置する現在は秋の紅葉で著名な真言宗系の単立寺院ですが、華厳僧にして鎌倉時代の旧仏教の改革者として著名な明恵上人が中興し伽藍を整え、晩年を過ごして示寂した寺院です。
一般的には鳥獣人物戯画を所有する寺院として知られており、数万点におよぶ所蔵古文書の重要性からユネスコ世界文化遺産にも指定されています。
境内には明恵上人が修行に励んだ様子を残す国宝石水院や、日本ではじめて茶の木の栽培を行ったと言われる日本最古の茶園、京都市指定名勝の遺香庵庭園などがあり、全域が国指定史跡です。

2018年の台風被害

こうした高山寺境内ですが、2018年7 月5~6 日に掛けての豪雨と同年9 月4日に襲来した台風21 号により甚大な被害を受けました。
とくに台風の強風による被害が大きく、茶園北側の斜面を中心に境内各所で倒木や大枝折損等が生じ、大径樹木だけでも約300 本が倒木や傾倒するなどの被害を受けました。

その他にも、倒木による金堂、開山堂などの建造物破損や、石築地、石階段、参道舗装などの破損、開山堂東側斜面の崩落、大雨による石水院西側の谷部法面の崩落などが生じました。
石築地については、鎌倉時代造営のものも含まれ、文化的に非常に高い価値が認められていたものでした。

修復

これらの被害に対して弊社で行った工事内容は主に、倒木等樹木の処理、石築地の修復工事、石水院西側の谷部法面および排水路の修復工事、参道や石階段などの修復工事などでした。

倒木等樹木の処理では、被災直後にさらなる被害拡大の恐れのある倒木を除去し、併せてご参拝の皆様の仮設通路を確保した後、本工事を実施しました。

倒木処理作業の様子

倒木処理作業の様子

一時的な解体の前に、積み直しのため各石に番号を付した様子

一時的な解体の前に、積み直しのため各石に番号を付した様子

石築地の修復では、まず倒木などの影響で破損しバラバラになった石の回収を行い、傾いてしまったなどで積み直しが必要な箇所については、記録を取ってから石築地の解体を行いました。

その後、一石ごとに可能な限り元あった位置に戻るよう積み直しを行いました。大きく崩壊し、元の状態がわからなくなってしまった箇所については、残存部分の積み方に倣い、石築地の持つ雰囲気を壊さないように施工を行いました。

このように、災害などによる予期せぬ緊急的な修復が発生した場合にも、文化財が持つ印象を受け継ぐ形で現代の職人が新たに施工し、その様子を永続的に未来に伝えていくことが可能になります。

石築地の修復前の様子

石築地の修復前の様子

石築地の修復後の様子

石築地の修復後の様子