

植彌加藤造園は、代々受け継がれていく日本庭園の景色をはぐくむだけではなく、国境を越え多様なバックグラウンドを持つ方々と”こころとわざ”を共有できるような事業を継続しておこなっています。こうした取り組みは、弊社の庭師たちにとっても、現場で培った知識を言語化し世界へ向けて発信する絶好の機会になっています。
日本語を母語としない方に向けた本プログラムは、そのうちのひとつです。「長きにわたり京都で日本庭園の育成管理・作庭に携わってきた熟練の職人たちが、その知見を伝える」ことに重点を置いた5日間のコースは、世界中から参加者を受け入れ、過去3年にわたって開催してきました。これまでにアメリカ、オーストラリア、イギリス、オーストリア、インドネシア、台湾などから参加者が集まっています。
最初の2年間の実績を鑑み、本年は初心者向けコースとリピーター向けコースの2つを設定し、同期間に並行して開催することとしました。本年の初心者コースには5名が参加し、先の2年間で実施したものと同様に、弊社が育成管理をおこなっている日本庭園での庭園管理・京都を代表する名庭の見学・大原にある弊社バックヤードでの作庭実習を5日間でおこないました。またリピーターコースには3名が参加し、日本庭園の作庭にかかる伝統的な技法(本年は延段づくり)を習得することに焦点を当て、3日間の実習をおこないました。最後の2日間は両コース参加者が協働して、あらたに日本庭園の景色をつくりあげました。ここでは、海外においても汎用性の高い延段の技法を用いて、京都の歴史ある寺院庭園のような景色をつくることを目標としました。
1日目 初心者コース:社長による講義、歓迎昼食会、庭園見学
2日目 初心者コース:庭園管理実習
3日目 初心者コース:庭園見学 リピーターコース:延段づくり実習
4日目 初心者・リピーターコース:作庭実習
5日目 初心者・リピーターコース:作庭実習、夕食会


どの時代においても、日本庭園は当時の生活様式を反映しそれにともなって変化してきました。プログラム初日の午前中、今後5日間学んでいくにあたっての方向性を示す導入講義をおこないました。歓迎昼食会のあと、午後は南禅寺界隈にて弊社が育成管理を手がける無鄰菴と對龍山荘(いずれも国指定文化財)を訪れました。



2日目の午前中は、南禅寺を見学しました。弊社は創業当時から南禅寺御用達を務めており、また1960年代からは作庭にも携わっています。今回は特に、方丈裏手において1984年に作庭した箇所に焦点を当てて解説しました。枯山水から茶庭、そして池泉庭園へと移り変わる景色が広がっており、参加者たちはプログラム最後の2日間で取り組む作庭実習のためのインスピレーションを得ました。
午後は、南禅寺界隈における近代日本庭園の傑作・大寧軒へと向かいました。ここでは、庭全体の雰囲気にあわせたアセビの剪定について、弊社庭師が参加者に指導しました。実習の終わりには、日本庭園における松について、季節ごとの手入れのコツについても解説をおこないました。
3日目からはリピーターコースの実習が始まり、この日は各コース別のプログラムに取り組みました。雨模様でしたが、両コースの参加者は悪天候にもかかわらず集中力を保ちながら熱心に学ぶ姿勢を崩しませんでした。
この日、初心者コースの参加者は大徳寺、妙心寺、知恩院の庭園を見学しました。いずれの庭園も、仏教寺院という環境のなかで多彩な表現が見られる名園です。


その一方でリピーターコースの参加者は、弊社のなかでもベテランの庭師たちから延段の施工について学んでいました。
まずこの日は、南禅寺の塔頭のひとつである天授庵を訪れました。

見学後、大原にあるバックヤードに移動し実際に延段の施工を開始しました。延段は一般的に格式高い「真」、そこからやや崩した「草」、もっとも崩した「草」へと移行するように造られます。この日は真の延段づくりから始めました。雨よけのテントの下で、リピーターコースの参加者は作業に取り掛かりました。

その日の終わりまでに、無事真の延段を完成させることができました。

3日目までに学んだことを受け、4日目・5日目に両コースの参加者は協働して作庭実習をおこないました。枯山水から茶庭へ景色が移り変わるのにともなって、延段も真から草に変化していく庭園を造ることを目標としました。初心者コースの参加者は、この2日間で枯山水と蹲踞を配置し、枯山水と茶庭の景色の間に四ツ目垣を作りました。その近くで、リピーターコースの参加者はその景色に調和する行・草の延段づくりを続けました。
ここからは、各コースの作業内容をそれぞれ紹介します。
初心者コース




リピーターコース



完成した庭園




