近年、日本庭園の管理や作庭に関する海外からの問い合わせが増加しています。
植彌加藤造園では、職人技術の継承に力を入れており、「教える」という行為は教わる側にとってだけでなく、教える側にとっても有意義であると考えています。
そこで、海外の方むけの年次プログラムとして企画されたのがこの「Japanese Garden Training Program」です。
2024年はその初年度にあたります。
より美しく、より自然に、より快適に。
目指すところはさまざまあれど、技術とはそれら目的を達成するための手段です。
庭園管理や作庭の技術も例外ではありません。
技術を学ぶには、まずその技術を以て到達すべき「よいもの」とは何かを知ることが大切といえるでしょう。
幸いにして、京都はその土地の特性を生かした名庭園に恵まれています。
そのため、本研修では研修生が実際に手を動かす実習日のほか、各所の名園を見る見学日もしっかりと確保しました。
1日目: 社長による講義と庭園見学(管理目線)、歓迎昼食会
2日目: 庭園管理研修
3日目: 庭園見学(作庭目線)
4日目: 作庭研修
5日目: 作庭研修、夕食会
プログラムの初日は、日本庭園についての概略講義の後、管理目線での庭園見学を行いました。見学先は、植彌が実際に管理している大寧軒と南禅寺方丈庭園です。それぞれの庭の特徴や背景について解説し、どのような育成管理を行っているのかを具体的に説明しました。
二日目は、無鄰菴にて庭園管理実習を行いました。
一日目の見学で学んだことに加え、無鄰菴庭園の特徴や背景についても解説の上、シダの手入れや松の芽摘みなどを実際に行っていただきました。
三日目は、作庭目線での庭園見学を行いました。2024年のテーマである借景と滝組に基づき、見学先として天龍寺、金閣寺、大仙院を選びました。
講師への質問が活発に飛び交ったほか、参加者間でも日本庭園に関するさまざまなトピックについて議論が行われました。
初日はどこかぎこちなかった参加者ですが、このころにはずいぶん打ち解けた様子でした。
四日目と五日目は、これまでの内容を基に作庭実践を行いました。
講師陣が重機を使用して最初の脇石据えを実演した後、参加者は石選び、表情選びを行い、実際に石を据えました。
2日間というはじめての方にとっては短い時間で滝を完成させるため、当初は講師陣があらかじめ選定した石のなかからどれを使うか選んでいただいていたのですが、ある程度据え方や表情の選び方に慣れてきたあとは、石置き場全体から参加者自身で理想の石を選んでいただいています。
今回の研修プログラムでは、参加者同士が積極的に議論し、様々なアイデアが出ました。
庭園見学の中で、テーマにとらわれず樹木の移植や運搬技術、竹の割り方、石灯籠の種類などについても話し合うことができたほか、作庭実習ではどんな滝をつくりたいか、参加者自身の明確なビジョンをもとに議論し、試行錯誤を重ね、完成まで至ることができたのは素晴らしい結果といえます。
初年度ということもあり改善点も見つかりましたが、非常に有意義な内容となりました。
2025年も、テーマを変更して同様のプログラムを実施することが決定しています。
詳細は以下をご確認ください。