日本庭園の価値を伝え育成管理の技術を普及させるために、植彌加藤造園は日本国外にむけても定期的に教育プログラムを提供しています。
このページでは、アメリカ合衆国オレゴン州にあるポートランド日本庭園の若手庭師の皆さんにむけて行っているオンライン実技講座「Meet the Niwashi」について、レポートします。
Meet the Niwashiは、植彌加藤造園が年間を通じて管理をしている庭園にて、春と秋の基本的な手入れを中心に2022年から開催してきました。毎年の実施内容をご紹介します。
庭園部の竹村茂好が講師となり、南禅寺境内地で松の手入れについてお伝えしました。
広い境内地の中で、それぞれの松にどのような景観的役割を担わせるのか、どのように手入れをするのかを解説したうえ、実演しました。
春に伸びる芽を摘み、葉の濃さや樹形を管理します。これまでその松がどのような考え方で手入れをされてきたのか、景観の中で今後どのような役割をさせていくのかをよく考えて、適切な葉の濃さや樹形を目指します。
秋には古くなった葉のみを手でむしり取り、冬に緑色の葉のみ残すようにします。熟練の職人は脚立から離れることなく手入れ中の樹形がどうなっているのかを想像しながら、効率よく作業を進めることができます。
講座の中では、道具の手入れ方法や高所作業での安全確保の方法なども具体的にお伝えしました。文化が異なる国での日本庭園の管理の難しさや意義深さなど、私達にとっても大変多くの学びを得ることができました。
庭園部の出口健太が講師となり、無鄰菴にて苔と松の手入れについてお伝えしました。名勝としての無鄰菴の景色全体をどう作り上げているのか、赤松や黒松など樹種の違いによって、どのような点で手入れに気を付けているのかを実演を交えて中継しました。
苔の手入れで最も重要なのは、そうじです。手帚(てぼうき)の使い方や、そうじの最中にどのように道具を持ち歩くのか、地下足袋の機能性などを実演を交えてお伝えしました。
無鄰菴の庭園全体の空間構成の中で、この日に手入れをする松をどのように仕上げていくのか示し、通常の作業スピードと解説のためのスピードの2種類の速度で松の芽摘みを実演しました。
無鄰菴の赤松と黒松を対象に、樹種の違いによる景色の中でもつ役割の違いを解説しました。また、どのぐらいの濃さに葉をむしるのかを見極める方法についてお伝えしました。
毎回、対象となった技術を身に着けるプロセスで経験したエピソードを交えながらの質疑応答は、講師にとっても改めて庭園管理の意味を振り返る良い機会となりました。
ポートランド日本庭園鳥居ヒューゴさんと、植彌加藤造園 庭園部の庭師 出口健太が対談したのち、ポートランド日本庭園の若手庭師の皆様の質問にお答えする方式でMeet the Niwashの企画はスタートしました。その中で、日本庭園の管理で重要な松の手入れを実演することとなりました。
あらかじめアンケートにて、どの程度の習熟度があるかを確認したうえで、松の芽摘みを実演しながら解説しました。
松の葉むしりを対象に、出口が実演を行いました。道具の準備方法、作業前に決めておきべきこと、どの程度の頻度で樹木から離れて仕上がりを確認すればよいのかを若手庭師の方のご質問に答えながら実演しました。
はじめてのリアルタイムかつオンラインの講座でしたが、結果的に映像と質疑応答により技術をレベルアップさせるための要所が伝わりやすい内容となりました。
3年に渡り続いてきたこの取り組みにより、文化的背景が異なる環境や従事者のもとで庭を育てることとは何かを再考でき、お互いに技術力を高めることができています。