星のや 京都作庭庭園|育成管理庭園

嵐山の地は、古くから風光明媚な土地として知られ、平安時代には桓武天皇を始め、皇族や貴族の遊覧がたびたびありました。現在も京都で有数の観光地として多くの人が訪れています。

その嵐山で、明治から営業していた温泉旅館「嵐峡館」をリニューアルし、星野リゾートの「星のや 京都」としてオープンしたのは平成21年(2009)のことです。庭園の設計は、オンサイト計画設計事務所の代表、長谷川浩己氏が担当されました。

嵐山渡月橋から大堰川を遡った急峻な斜面上に位置する星のや 京都は、敷地からの眺めもさることながら、宿泊者専用の船での送迎など、風情溢れるおもてなしでも有名ですが、リニューアルに際しての改修で、敷地内にも随所に目を惹く意匠が施されています。

細長い敷地内を奥に行くまでには、客室ごとに設けられている入口に意匠の異なる延段が設けられているのを見ながら進んでいきます。延段に使われている石材は、京都を始め、山梨や香川、兵庫、岡山など各地から集められたもので、独特の意匠で通り過ぎる人の目を楽しませてくれます。

そして、たどり着く「奥の庭」は、白砂の中に縦に埋め込んだ瓦を砂紋に見立てた、現代の枯山水ともいうべき斬新なデザインが見られます。さらに驚きなのは、瓦が支えてくれるため、この枯山水の庭の中を歩きながら、大堰川や嵐山の眺めを楽しめる点です。また、庭の中には上面が平らに磨かれた石がいくつか据えられています。この石は景石として眺めることもでき、座ることもできますが、秋になると、磨きこまれた石の上面に、あたかも水面のようにモミジの赤が映え、何とも言えない味わいを醸し出します。枯山水の風情を残しながら人が入り込める空間を演出するとともに、四季折々、移ろう景色との調和を楽しむことができます。

このように、「星のや 京都」の庭園では、長谷川浩己氏の斬新なランドスケープデザインに、植彌加藤造園の伝統的な施工技術がブレンドされた、和のおもてなし空間が創り出されています。伝統と革新が調和した、ここでしか味わえない庭園空間を楽しみ下さい。

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