福田美術館は京都を代表する景勝地・嵐山に2019年10月に開業した私設美術館です。三谷康彦(株式会社MLS)氏によるランドスケープの計画・設計のもと、特別修景地域にも指定されている嵐山の自然と空間に配慮しながら、弊社が実施設計・施工を行いました。
大堰川を挟み嵐山の対岸に位置する立地を活かした庭園をコンセプトの一つとして、嵐山を借景とするだけでなく大堰川へと繋がる水盤に周囲の景色を映り込ませることで連続性を演出し、より庭園が広く感じられる空間を創出しています。
その水盤の中では大堰川との連続性を作り出すため6段の小さな高低差を水が流れ落ちています。また池底の石はあえて固定せず、水平に据え付けた石面と砂利による市松模様とし、苔庭との境界をあいまいに表現しています。
水深を浅くし、かつ水質を保ち「水鏡」を維持するために、「出来るだけ水を太陽光に当てない」「常に流れている状態」に保っています。これは、水盤に配置した景石を、水面より15ミリ浮かせて据え付ける手法により、景石の下の影になった部分を、水の一部が通り抜けることで、水全体にあたる紫外線の量を減少させ、濁りの原因となる藻等の発生を抑えることが可能となりました。このように、透明感をたたえた水盤は、線状に植栽された水性植物と相まって、嵐山への奥行きを強調しています。
植栽はモミジ・桜・アカマツなど嵐山や小倉山に生息する樹種を採用しています。「縁側」をイメージした回廊からは、四季の変化を眺めることができる空間となっています。
なお嵐山のマツは昭和30 年代後半にマツクイムシの被害により激減しましたが、失われた景色をしのぶ構成要素として、アカマツをこの庭園の主木としました。庭園に植樹するアカマツの選定にあたっては、マツ枯れ病を防ぎ京都の風景を保全するため、マツ材線虫病の診断を行って合格したものを植栽しました。
所在地:京都市右京区
公開状況:公開(施設利用者対象)
作庭時期:2017~2019年
福田美術館 公式サイト