岐阜県大垣市の住宅地にあるI邸の庭園は、新築成った主屋の庭を、ご一族の繁栄と命のつながりを表現したいというご要望に応えて作られた庭園です。設計にあたっては、伝統的な日本庭園の手法を用いながら現代的な主屋に調和する景観とすること、命のつながりを表現するため、お施主様が所有されていた石や瓦を再利用し、枯流れのある枯山水風の庭園を作ることを主眼としました。
こうして作られた庭園は、敷地に入って玄関へ向うまでの平庭と、その奧の仏間に面する枯山水の庭の、大きく2つに分かれています。
まず、前庭ともいえる平庭には、板石を組み合わせた中に、線瓦と黒い玉石を用いた、格調高い「真」でありながらも「行」の意匠も交えたモダンな感じの園路に面して、砂利敷きの中に植栽を施した中島を設けた、簡素な庭としました。
そして、奧の枯山水の庭は、主屋の仏間から眺められることを主眼として作りました。仏間から見て一番奥に築山と滝石組を作り、そこから枯流れが仏間前まで流れ込むようなデザインとしました。この流れには、玉石や手水鉢や飛石に用いた臼石、景に添えるために置かれた瓦などは、お施主様が代々お持ちであったものを使い、連綿と続く流れという意匠を用いたということだけでなく、庭そのものが命のつながりを象徴するものとして作られています。また、この築山の背後に駐車場が設けてありますが、築山の背後から駐車場へも枯流れが作られているのがちょっとしたアクセントになっています。
さらに、庭の各所にサクラやサルスベリ、モミジを植え、新緑や花、紅葉が楽しめるようになっています。
こうして、お施主様との共同作業で出来上った庭ですが、しばらくしてからお施主様にお聞きしたところ、朝に水を打つと、朝日が玉石や滝石組に反射して、仏間から見ると何とも神々しい雰囲気となるそうで、施工に携った職人の予想しなかった光景が楽しめる庭となっているようです。