京都岡崎の閑静な佇まいの一角を占める本施設の庭園改修工事では、母屋と茶室をつなぐ空間を、「用」と「景」を兼ね備えた露地に再構築するデザインをご提案し、施工まで一貫して行いました。
本施設の庭園部分は東西方向に配された枯滝や枯流れ、石橋、東側の茶室、北側の母屋が主要な構成要素です。石橋を渡り茶室に至る途中には、伝統的な蹲踞と灯篭が配置されており、露地としての要素をあらかじめ備えていましたが、母屋と茶室をつなぐ動線が長いという課題を抱えていました。
お茶の世界を代表する空間である露地は、端的に言って街中の喧騒あふれる通りから一歩ずつ静謐な茶室に近づくプロセスに意味を与えるための空間です。そこでは茶会を催すために差しさわりのないスムーズな動線「用」と、目や耳に心地よい「景」が調和しています。
本施設では主に、露地の動線の短縮化を図るための石階段を「用」として、視点場を意識した蹲踞の再構成を「景」としてご提案しました。
石階段が印象的な「景」を創出し、また、階段と園路に同じ素材の石材を使うことで、建物と庭を視覚的にも繋げています。
蹲踞の向きを調整して再構成することで母屋、茶室、石橋の間の主要な動線の短縮化を図るとともに、母屋や茶室からの視線を意識した景色づくりを行いました。
加えて、景色にあわせて植栽の見直しを行いました。
母屋から茶室へ移動する動線を、一時的に屋外を通る形として配することで、自然に向き合った解放感のある空間が生まれました。
所在地 / 京都府京都市左京区
建築部分改修 計画・設計・施工 / 大林組
庭園部分改修 計画・設計 / 大林組設計本部ランドスケープ部、植彌加藤造園
施工 / 植彌加藤造園
造営年 /2024年
対象 / 800m2