京都ポルタは京都駅北口に位置する地下商業施設です。「ポルタ」はイタリア語で「門、入口」を意味し、本施設は国際観光都市・京都の玄関口たる京都駅とつながる商業施設として、1980年の開業より多くの方々に親しまれてきました。2022年に西エリア飲食ゾーンの一部が改装リニューアルされることとなり、弊社はその南北通路である「西通り」の基本計画・基本設計に監修的立場で携わらせていただくとともに、床面に石を用いた範囲の詳細デザイン・設計・施工を手掛けました。
西通りは「京のお庭」がリニューアルのテーマとされ、弊社は日本庭園の伝統技法である縮景を用いて、鴨川を中心とする京都市中をこの地下空間に表現することをご提案しました。具体的には、鴨川を表す加工を施した天然石を西通りの南北に敷き、同じく天然石の飛石や沓脱石、伽藍石、延段、石橋といった日本庭園の要素を随所に配置することとしました。本施設は京都駅の連絡通路という公的スペースでもあるため、作庭条件として床面の平坦性、滑り対策など、歩行者の安全確保が注意深く求められました。そのため、安全性と高質を両立できるよう、弊社実績である「星のや東京」、「福寿園」をお施主様にご視察いただき、試作を重ねながら計画・設計・施工を進めていきました。
川の流れの表現方法については、耐久性や安全性、コストなどを考慮して様々な検討を行いました。結果として、磨き石に模様を彫り込む案を採用しましたが、掘り込みの方法は経年の変化によって滑りやすくなることを避けるため、通常とは異なる技法を用いました。このようにして表現した川の流れには鯉が泳いでいるほか、出町柳にあたる鴨川と高野川の合流地点には飛石である「亀石」も見ることができます。庭としての設えを特徴づける飛石・延段・伽藍石の石材については、西通りの空間ボリュームや、周囲の大判床タイルに対して、スケール感で負けないよう可能な限り大きいものを用いるようにしました。また、石の自然な風合いを活かすことができ、かつ平坦性と耐久性が確保されたものであるという条件のもと、石材の調査・選別・仕入れに勤しみました。
同時期に西通りの東側、西側もリニューアルされており、東側は「京の町並み」のイメージとして軒が連なる京都の小さな路地が表現され、西側は「京の邸宅」のイメージとしてお屋敷の室内空間が表現されています。「京の町並み」、「京の邸宅」、「京のお庭」の3つのイメージで構成されたポルタ西エリア飲食店ゾーンは、今回のリニューアルにより更なる活気にあふれています。
事業主:JR西日本京都SC開発株式会社
共用部全体の内装監修・設計・施工:株式会社丹青社