本施設の日本庭園は既存庭園で用いられていた石材や樹木を活用しながら、富本憲吉氏の生家だった場所として相応しい庭園を創りあげました。
富本氏の作品に描かれている模様の緻密さや陶芸の技と、日本庭園の創りこまれた世界観や造園の技には通ずるものがあると考え、本格的な日本庭園を作庭しました。
既存庭園の高低差を利用して、庭園北側に滝石組みを配し、そこから流れ落ちた水が 建物の下を通り、敷地全体に流れ込んでいくイメージを表現しています。また延段に組込まれた石敷きや既存瓦を使用した瓦敷きは、職人の技で富本氏が描いた花のモチーフを模様として表現しています。飛石、蹲踞、燈籠などは既存庭園で使用されていたものを再利用し、往時の雰囲気を 味わえる構成になっております。
植栽においても既存の樹木を活かすために、剪定、移植を行いました。庭園の中心部分にはシダレザクラを植栽しました。正面玄関入ってすぐにある大きなシダレザクラと同様の一重シダレザクラとすることで空間に共通性を持たせています。
その他にもモミジ、ドウダンツツジ、ツバキ、アジサイなど四季折々の植物を楽しめる植栽を目指しました。庭園内の樹木や草花を眺めながら、自然をモチーフにした富本氏の想いを馳せることができる空間です。