和集庵は、京都市左京区の南禅寺参道沿いにある庭園です。当地には、もともと旅館がありました。旅館が廃業した後、新たな施主様のご要望にお応えして、その庭園にあった庭石や石燈籠、樹木を使った庭を新たに作庭しました。庭園には施主様が琵琶湖畔に所有されていた石材も用いていますが、新しく追加したのは白砂とわずかな植栽程度で、ほとんどの素材は旅館の庭園にあったものです。
現在の建物は、むかし奈良の吉野にあった古民家が移築されています。建物の南側と東側にそれぞれ枯山水の庭園をお作りしました。
建物正面にある南庭は植栽の全くない石庭で、和集庵の「和」の字をイメージしています。
建物に向かって右手から奥に続く東庭は南北に細長く、奥側である北端に南に向かって流れだす枯滝組みを設けています。庭園の中ほどには石橋で結ばれた2つの島があり、南側の島には石燈籠と手水鉢を設けました。建物の南端あたりに四ツ目垣で間仕切りを設け、枝折戸で出入りできるようになっています。
東庭の南端付近には力強い石組による蓬莱島があり、四ツ目垣のすぐ南には蓬莱島に向かって漕ぎ出す宝船に見立てた船石を据えました。
建物内には東庭に面した3つの部屋と4つの窓がありますが、それぞれの窓から違う景が見えるようにデザインしています。また、全ての部屋から庭園に下りられるように2つの沓脱石を設けました。北側の沓脱石は、2つの部屋から降りられる大きな石を用いています。水を表わす白砂の間をぬって飛石で沓脱石をつなぎ、庭園内を歩けるようにしました。飛石のなかには、職人のアイディアで生まれた亀の姿を模したものも混じって泳いでいます。
和集庵の庭園は枯山水のシンプルな構成でありながら、随所に工夫が凝らされています。
所在地:京都市左京区
公開状況:非公開
作庭時期:2017年