大阪府三島郡島本町桜井で令和2年に発見された尾山遺跡の泉跡を、植彌加藤造園が令和5年12月から令和6年3月にかけて再現工事を行いました。この工事は遺跡の再現を通じて貴重な歴史的資源を保護・活用していくとともに、遺構の価値をわかりやすく伝え地域住民の皆様に親しみを持っていただく整備を目指しています。
尾山遺跡泉跡は、鎌倉時代後半ごろの遺跡と考えられ、特に泉跡は庭園造営の手法に基づいていることから、後鳥羽上皇の水無瀬離宮の年代とは異なりますが、水無瀬離宮または後鳥羽上皇に近しい皇族や貴族に関する遺構である可能性があります。今後の調査によっては我が国の中世史や造園史において非常に重要な遺構となりえる可能性を持っています。
泉跡工事はすでに桜井せせらぎ公園として整備が完了している場所で行われました。したがって発見当時の状態と位置を完全に復元するのではなく、公園の構成要素と調和する形で可能な限り遺跡の形状と地図上の位置を再現する手法がとられました。
令和2年の泉跡発掘時の状態が3D点群データで記録されており、取り上げられた石材は、島本町立歴史文化資料館にナンバリングされた状態で保存されていたため、主要な石材同士の位置関係を、既往資料を参考に再現して据え直しを行いました。また、今回の再現では泉跡の排水機能をなるべく目立たせずに公園内の既設桝に排水できる構造を取り入れました。
その他、泉跡から発掘されたケヤキをシンボルツリーの樹種として選んだり、写真を多用した解説看板の設置を行うなど、地域の埋蔵文化財の価値を生活圏で顕在化させる取り組みを行いました。
※事業名『尾山遺跡池泉跡移築復元整備事業』