京都一の繁華街である河原町三条に新築されたヒルトン京都は、京都の奥性、深みと陰影による美意識が感じられる「奥深い装い」を空間コンセプトとしています。弊社は造園・ランドスケープに関わる空間の設計施工を担当し、コンセプトの実現に向け取り組んで参りました。
●Front Garden 奥へ奥へと導く前庭
1階のランドスケープは、限られた敷地の中でも奥行きを作り出し、都市の喧騒から離れた凛とした佇まいが体感できる空間を目指しました。河原町通りからのメインアプローチは、視線を通さない雁行した動線環境に、列植したタケのゲートで立体的な奥行きを生み出し、京都ならではの技法や素材を用いた設え(あられこぼしや古材石敷き)、清らかで落着きを与える水景などを用い、ゲストへのおもてなし、非日常の気配を作るようにしました。木屋町通りからは、庭を介した飛石や延段による動線環境をつくることで、歩きながら景色を愛でる露地のような佇まいを演出しています。車両出入口は自然樹形のモミジでゲートを形成するとともに、植栽により包み込まれた印象のエントランスとなるよう意識しました。
●Restaurant 内と外の間にある縁側空間
河原町通りに面した細長く限られた空間は、奥行きをつくり出すため歩道との高低差45cmを生かした地形や、大中小の景石、樹高・樹種の異なる樹木を織り交ぜ、立体感をつくり出しました。落葉樹と常緑樹で変化に富む植栽は、屋内のレストランと河原町通りとを柔らかく遮蔽し、賑わいの演出にも寄与しています。
●Executive lounge 世界を切り替える坪庭
9Fフロア中央に位置し、EVホールに降り立ったゲストが自ずと目にする景色として、限られた方々への特別感や期待感を演出できるよう意識しました。自然光に照らされ、東西南北を囲われた空間は、保津峡や北山、鴨川といった京都の各方位にある特徴的な自然風景から創造された庭です。3方向からゲストの視線を受ける位置にあるため、対峙する絵画的な美しさを実現するとともに、景色の変化をシークエンス的に楽しめるよう構成しています。
●Rooftop Bar 街に浮遊する累座(かさねのざ)
Rooftop Barは、東山を借景とし街に浮遊しているかのような空間体験を与えることをコンセプトとしています。一望できる東山との関係性を意識し、東山を代表する樹種であるアカマツをシンボルツリーとして水盤両側に配し、京都ならではの佇まいを特徴づけています。
事業主:東京建物株式会社
建築 設計施工:株式会社竹中工務店
内装デザイン:有限会社橋本夕紀夫デザインスタジオ