渉成園は、真宗大谷派の本山(真宗本廟)の飛地境内地で、周囲に枳殻(からたち)が植えてあったことから枳殻邸(きこくてい)とも呼ばれています。
慶長7年(1602)に徳川家康からの土地の寄進により東本願寺が創立され、寛永18年(1641)に徳川家光が新たな土地を寄進します。その一部に東本願寺第13代宣如上人の承応2年(1653)の退隠(隠居)に伴って造営されたのが渉成園です。
東本願寺歴代と親しい人物だけでなく、幕府の中枢人物を招いての様々なもてなしが行われた渉成園は多くの人々を魅了し、その情景の美しさは賴山陽の『渉成園記』(文政10年・1827)をはじめとして、多くの文人達が詩文を残しています。
渉成園十三景をはじめとした江戸時代の情景を今に伝える名園の一つです。
また、今日では、生物多様性の宝庫としての価値も注目されています。長年にわたる適切な育成管理の結果、多様で希少な動植物の生息地となっていることが評価され、2024年(令和6年)、全国の寺社および名勝庭園で初めて環境省の「自然共生サイト」*に認定されました。
*自然共生サイト:民間の取組によって生物多様性が保全されている区域を環境省が認定する制度