国立京都国際会館(以下、会館)は1966(昭和41)年5月に、わが国初の国際会議場として開館しました。約156,000m2の広大な敷地に、本館、イベントホール等の会議、展示施設の他、宝ヶ池を臨む本館南西側には約23,000m2の日本庭園が設けられています。大規模な国際会議を行うために必要な機能が宝ヶ池の地に集約され、開館から約50年の間に17,000件あまりの会議・イベントが開催されました。
本館の南西に広がる庭園は建築家・大谷幸夫氏(1924~2013)の設計によるもので、「人は自然の中に集い話し合う」というコンセプトのもと、大会議場に面して宝ヶ池周辺の山々や木立を映し出す「幸ヶ池」と「八つ橋」が一体となって配置された回遊式日本庭園となっています。また、八つ橋の架けられた直線を組み合わせた幾何学的な形状の池と、宝ヶ池越しににそびえる峰々の自然の景観との対比が印象的で、幸ヶ池の中には舞台も設けられています。
庭園内には約150本の桜が植栽され、毎年春にはイベントが催され、庭園が無料開放されるなど隠れた桜スポットとしても有名です。庭園内には1967(昭和42)年に会館初代理事長・松下幸之助氏の寄贈による茶室「宝松庵」があり、毎年茶会も開催されています。
弊社は大谷氏の建物と庭園の設計意図に基づき、作庭当初からその後の改修工事、育成管理に携わってきました。
残念ながら2010年前後から、周辺に自然が残る立地より会館の庭園内にシカが多く侵入しています。そのため、ウメやツツジ類などの低木を中心に、現在はシカ食害による樹木や草花の枯損や衰退が多くみられます。
この状況を鑑み、会館では2019年に庭園内にシカが侵入できないよう外周をフェンスで囲む工事が行われ、2020年から4年計画で、庭園の整備工事が進められることになり、この工事も弊社が受注させていただくこととなりました。大谷氏の作庭意図を踏襲しながら、訪れる方々が四季を感じられるよう、庭園の整備工事と日々の管理に弊社も協力していきます。