左京区岡崎に位置する当地には、もともと大正期に作られたと推測される主屋と庭園が残されていましたが、10年以上にわたり放置されかなり荒れ果てた状態になっていました。その邸宅を京都の風光明媚な土地柄を愛された現所有者の方が購入され、日本庭園の再生を行いました。
2012年5月から約2年半に渡った庭園の再生プロジェクトは、枝が伸びて茂った樹木を往時の姿に蘇らせる修復剪定を行うことから始まりました。その後、庭園全体の改修計画を作成し、大正時代から現在まで残されてきた景色と周辺環境を活かしながら、庭師の技術と創意工夫を駆使し新たな景色を創造しました。日々、日本庭園を育んでいる庭師達が、今後も将来に渡り育み続けることを考慮しながら再生した日本庭園です。
改修工事では、東山から流れ出る滝をイメージした滝石組と流れ、琵琶湖疏水からの水を利用した園池、既存石材を再利用した園路などを作庭しました。また、かつて松林であった東山と連続するように植えられていた松の修復剪定をし、園内の松の美しさを引き出す景色づくりを行うとともに、今後もその景色を継承していくため新たな松を植栽しました。
こうした庭園の改修工事とあわせ、もろとみ工務店による建築の改築工事も進められました。計画段階から建築の設計者と綿密な打合わせを行い、庭園と建築が一体となった「庭屋一如」の景色を計画しました。施工の際には建築内部の視点場から庭園を眺め景石や樹木の位置を決定したことで、庭園と建築との連続性が感じられる空間が成立しています。